猫が爪切りを嫌がる。足を触ると逃げる、押さえると暴れる、1本切ったところで終了になる。よくあることです。そして多くの場合、原因は猫の性格ではなく、やり方と道具のほうにあります。
先に結論を書きます。押さえ方を工夫するより、どこで嫌がっているかに合わせて進め方そのものを変えるほうが早く片づきます。ここでは嫌がる理由を切り分けたうえで、押さえて切る以外の進め方を3つ紹介します。全部を試す必要はありません。どこで嫌がっているかによって、選ぶものが変わります。
まず、どこで嫌がっているかを切り分ける
「爪切りが嫌い」とひとまとめにすると、対策を選べません。次のどれに近いかを、次回の様子で観察してみてください。
| 嫌がるタイミング | 猫が嫌がっているもの | 向いている進め方 |
|---|---|---|
| 足を触った時点で逃げる | 足先に触れられること | 方法1:触れる練習から |
| 抱えた瞬間に暴れる | 体を拘束されること | 方法3:猫自身にとがせる |
| 刃を近づけると嫌がる | 音・刃の圧迫感 | 方法2:切るのをやめて削る |
| 2〜3本目から嫌がる | 時間の長さ | 1回の本数を減らす |
猫の爪は前足5本ずつ、後ろ足4本ずつの合計18本あります。1回で全部終わらせようとすると、どの猫でも後半は嫌がります。日をまたいでいいと決めるだけで、状況が変わることは少なくありません。
18本を毎回そろえる必要もありません。爪切りの頻度を日数ではなく爪の状態で決めれば、押さえる回数そのものが減ります。
方法1:切らない日をつくって、触れる練習をする
足先を触られるのが苦手な猫には、爪切りを持たない日を用意します。やることは短くて構いません。
- 猫がくつろいでいるときに、前足に1秒だけ触れる
- すぐ手を離し、おやつを少しあげる
- これを1日2〜3回、数日繰り返す
- 嫌がらなくなったら、肉球を軽く押して爪を出すところまで進める
- 爪が出せるようになってから、初めて1本だけ切る
途中で猫が耳を伏せる、しっぽを打ちつける、体が固くなるといった様子を見せたら、その時点でやめてください。嫌がる前に終わることが、次回につながります。
多い失敗は、うまくいった日に「もう少しだけ」と続けることです。猫が覚えるのは長さではなく、嫌なことが起きなかったという結果のほうです。
方法2:「切る」のをやめて「削る」に変える
パチンという音と、刃で挟まれる圧迫感が苦手な猫がいます。この場合、切る道具を変えても解決しません。切断という動作そのものを外す必要があります。
電動やすりは、爪の先端を少しずつ削って丸める道具です。切る瞬間がないため、深く切りすぎる不安も減ります。黒い爪で血管の位置が見えにくい猫にも向いています。
ただしモーターの振動音を嫌がる猫もいます。最初は電源を入れずに爪へ当てるところから始め、音に慣れてから短時間だけ動かしてください。SafeTrim(セーフトリム)のように、クリッパーと電動やすりが一体になったタイプなら、その日の猫の様子で使い分けられます。
方法3:押さえるのをやめて、猫自身にとがせる
抱えられること自体が苦手な猫には、飼い主が切る回数を減らす方向で考えます。研磨面を組み合わせた爪とぎボックスを使うと、猫が自分でとぐ動作の中で爪の先端が削れます。
これは爪切りの完全な代わりにはなりません。とぎ方には個体差があり、後ろ足の爪はとがれません。それでも、押さえて切る回数が月2回から月1回に減れば、猫にとっても飼い主にとっても負担が変わります。ClawEase(クローイーズ)のような削りボックスは、ふだんの爪とぎの近くに置くと使われやすくなります。
置き場所で結果が変わります。今使っている爪とぎのとなりに並べると習慣の延長で触り始めますが、ふだん通らない場所では警戒されたまま終わりがちです。
道具の種類ごとの違いは猫の爪切り・爪ケア用品にまとめています。
道具ごとの向き不向きを一覧で比べる
道具の側から見ると、こう整理できます。
| 道具 | 受け入れられやすい理由 | 苦手になりやすい猫 |
|---|---|---|
| クリッパー | 1本が数秒で終わる | 切る音と刃が苦手な猫 |
| 電動やすり | 深爪の不安が小さい | モーター音が苦手な猫 |
| 研磨面つき爪とぎ | 押さえられずに済む | 場所にこだわりが強い猫 |
| 動物病院・サロン | 家に嫌な記憶が残らない | 移動が苦手な猫 |
前足はクリッパー、後ろ足はやすり、という使い分けも普通です。その日の様子で道具を変えられると、今日は無理だったで終わる回数が減ります。
爪切りで切ってよい長さと、出血したときの対応
切ってよいのは、透明で細くとがった先端だけです。根元側にはピンク色に見える血管と神経が通っていて、そこまで切ると出血し、猫は痛みを感じます。一度痛い思いをすると、次から警戒が強くなります。
白い爪なら、肉球を軽く押すと根元のピンク色が見えます。その手前を2ミリほど残せば血管に当たりません。黒い爪は外から見えないので、先端だけを少しずつ削るほうが安全です。短くすることより、痛い思いをさせないことが優先です。
それでも深く切ってしまったときは、清潔なガーゼか指で切り口を数分押さえます。手当ての手順は猫の深爪で血が出たときの対応にまとめています。出血が数分で止まらない、猫が足をかばう、腫れや熱を持つといった場合は、動物病院にご相談ください。
子猫・シニア猫・多頭飼いの場合
同じやり方でも、猫の状態によって気をつける場所が変わります。
- 子猫。爪が細く、血管が先まで来ています。切る量はごく先端だけにして、触られても平気にする時期と考えてください。
- シニア猫。爪が厚く硬くなり、とぎ行動も減るため巻き爪になりやすくなります。間隔を短くし、1回の本数を減らします。
- 持病のある猫。心臓や呼吸器の持病、関節の痛みがある猫は、押さえること自体が負担です。家で無理に進めないでください。
- 多頭飼い。他の猫が見ている前では落ち着かない猫がいます。別の部屋で1頭ずつ行ってください。
どうしても難しいときは
ここまで試しても1本も切れない猫はいます。その場合、家で頑張り続けることが最善とは限りません。動物病院やトリミングサロンでお願いする方法があります。爪切りだけで対応してくれるところも多く、健康診断のついでに頼むこともできます。費用の目安と依頼の仕方は猫の爪切りは動物病院でいくらかにまとめました。
プロに任せることは、あきらめではありません。猫が飼い主を「爪切りをする人」として警戒するようになるより、外で済ませて家では穏やかに過ごすほうが、結果的にお互いのためになることがあります。
こういうときは獣医師へ
嫌がり方が強いときは、痛みが隠れていることがあります。次の様子があれば、家で続ける前にご相談ください。
- 爪が丸まって、肉球に触れている、または刺さりかけている
- 爪の根元が腫れている、触ると強く痛がる、膿のようなものが出ている
- 爪が割れている、はがれかけている、爪の色が急に変わった
- 以前は切らせていた猫が、急に強く嫌がるようになった
- 【緊急】押さえても出血が止まらない、または出血の量が多い
- 【緊急】切ったあとに足を着かない、歩き方がおかしい
4つめは見落とされやすいサインです。急に嫌がるようになった猫では、爪ではなく関節や口の中に痛みがあることがあります。ここに挙げたのは相談のきっかけであって、原因を家庭で判断するためのものではありません。
よくあるご質問
猫が爪切りを嫌がる理由は何ですか?
足先は猫にとって敏感な部分で、触られること自体を警戒する猫が多くいます。加えて、過去に深く切られて痛かった経験や、長時間押さえられた記憶が残っていることもあります。理由によって有効な対策が違うため、足を触った時点なのか、刃を近づけた時点なのか、どこで嫌がるかを見てください。
暴れる猫を押さえつけて切ってもいいですか?
おすすめしません。その場は切れても、次回はさらに強く抵抗するようになります。1日2〜3本に分ける、日を空ける、削る方式に変えるなど、猫の抵抗が出る前に終わる方法を選ぶほうが、長い目で見て続けられます。
洗濯ネットに入れる方法はどうですか?
体の動きを抑えられるため、短時間で終わらせたいときに使われることがあります。ただし猫にとっては拘束であることに変わりはなく、ネット自体を嫌がるようになる猫もいます。使う場合は数本だけと決め、長時間は避けてください。
爪とぎをしていれば爪切りは必要ないですか?
必要です。爪とぎは古い層をはがす行動で、先端の鋭さがなくなるわけではありません。役割が違うため、爪とぎと爪切りは両方続けてください。
後ろ足も切る必要がありますか?
前足ほど頻繁でなくてかまいませんが、後ろ足の爪も伸びます。前足より伸びが遅い猫が多いので、前足の半分程度の頻度で状態を確認してみてください。