猫の爪とぎが壁で始まると、ソファよりやっかいです。壁紙は張り替えになりますし、賃貸なら退去時の費用に直結します。
先に結論を書きます。壁の爪とぎは、保護シートを貼るだけでは止まりません。守る面を覆うことと、1メートル以内に高さのある行き先を作ることは、必ずセットで進めてください。そして壁は、ソファとは猫の動機が少し違います。ここでは壁が狙われる理由、賃貸で気をつけること、壁紙の種類ごとに貼れるものが変わる話、そして猫の行き先の作り方をまとめます。
壁の爪とぎは、高さが取れるから起きます
ソファは横に伸びて水平にとぐことが多いのに対し、壁は立ち上がって全身を伸ばせます。背伸びしたときにいちばん高い位置に跡を残せる場所が壁です。爪とぎには「ここは自分の場所だ」と示す意味があるため、高い位置ほど都合がよくなります。
よく狙われるのは、部屋の角、ドア枠のそば、そして猫がよく通る動線上の壁です。角が多いのは、両側から爪が当たって手応えがあるためと考えられます。
つまり床置きの爪とぎを増やしても、壁の代わりにはなりにくいということです。壁対策では「高さのある縦型」を用意しないと行き先になりません。
賃貸なら、先に確認しておくこと
国土交通省の原状回復に関するガイドラインでは、ペットによる傷やにおいは通常の使用による劣化とは別に扱われ、借主の負担とされるのが一般的です。壁紙の張り替えは面単位になることが多く、1面あたりで数万円になることもあります。
ただし契約内容によって扱いが変わります。ペット可物件でも「ペットによる損耗は借主負担」と明記されていることが多いので、心配な場合は契約書の原状回復の項を確認してください。判断に迷う場合は管理会社や専門家にご相談ください。
この前提があるので、賃貸では「守る」より先に「はがせるか」を確認するのが実務的です。保護のつもりで貼ったシートが壁紙ごと剥がれたら、守った意味がなくなります。
壁紙の種類で、貼れるものが変わります
| 壁の種類 | 見分け方 | 粘着シートの相性 |
|---|---|---|
| ビニールクロス | 日本の住宅で最も多い。表面がややツルツルし、水を弾く | 比較的よい。ただし継ぎ目は避ける |
| 紙クロス | マットな質感。水が染みる | ×。はがすとき一緒にめくれます |
| 砂壁・繊維壁 | 触ると粉が付く | ×。そもそも粘着しません |
| 塗り壁(漆喰など) | ざらつきがあり継ぎ目がない | △。目立たない場所で先に試す |
判断がつかない場合は、家具の裏など目立たない5cm四方で先に試して、24時間後にはがしてみてください。ここを飛ばして一面に貼ってしまうのがいちばん危ない進め方です。
保護する範囲は「高さ」で決める
壁対策でよくある失敗が、傷のある部分だけ貼ることです。猫は立ち上がってとぐため、貼った上の縁から先を狙い直します。
床から猫が背伸びしたときの爪の位置までを覆ってください。成猫なら床から60〜70cm前後が目安ですが、体の大きい猫では80cm近くになります。実際に壁についている既存の傷の最上部を見て、そこから10cm余裕を持たせると確実です。
Kitty Shieldz(猫の爪とぎ防護シート)はサイズに合わせて切れる粘着式の保護シートで、1枚30×100cmです。縦向きに使えば高さを確保でき、角には折り曲げて回り込ませられます。商品仕様では貼り直しと再利用ができるとされていますが、上に書いたとおり壁紙の種類によっては相性が悪いため、必ず目立たない場所で先に試してください。
貼る前の下準備と、はがすときの手順
保護シートは貼り方より「貼る前」で結果が変わります。ほこりや皮脂が残っていると、粘着が効くのは最初の数日だけです。固くしぼった布で拭き、完全に乾くまで待ってから貼ってください。
| 貼る前に見る場所 | やること | 飛ばすとどうなるか |
|---|---|---|
| 壁紙の継ぎ目 | またがない位置で切る | 継ぎ目からめくれます |
| すでにある深い傷 | めくれを寝かせてから覆う | 浮きが爪の取っかかりになります |
| コンセント・巾木のきわ | 少し離して止める | 縁からはがされます |
はがすときはドライヤーの温風を数秒当て、角を斜めにゆっくり引いてください。まっすぐ手前に引くと、粘着より壁紙の表層が先に負けます。
守るだけでは止まりません。行き先を作る
ここが壁対策でいちばん抜けやすいところです。保護シートを貼ると、猫はその隣の壁か、別の部屋の壁に移るだけのことがあります。爪とぎ自体は正常な行動なので、なくすことはできません。
- 縦型の爪とぎを、守った壁から1メートル以内に置く。床置きでは代わりになりません。立ち上がれる高さが要ります。
- 今とがれている場所と同じ動線上に置く。部屋の隅や物置に置いても使われません。
- 寝床のそばにも1つ。猫は寝起きに伸びながらとぐ習性があります。
- 素材を1種類に絞らない。壁でとぐ猫は硬めの面を好むことがあり、ダンボールだけでは物足りない場合があります。
爪とぎ本体の選び方は猫の爪とぎ・爪とぎ防止グッズにまとめています。カスの散らかり方で素材を選びたい場合は猫の爪とぎでカスが出ないのはどれ?を、ソファ側の対策はソファの爪とぎ対策をご覧ください。
子猫とシニアでは、守る高さが変わります
子猫は届く高さが低いので当座は低めでもしのげますが、体は数か月で伸びます。最初から成猫の高さで貼っておくほうが、結局は安く済みます。貼り直すたびに壁紙へ負担がかかるためです。
シニア猫は逆に、立ち上がる回数そのものが減ります。壁の被害は落ち着く一方で、とぐ回数が減ると爪の古い層がはがれにくくなり、太いまま伸びて肉球に巻くことがあります。月に一度は前足の爪先を確認してください。伸びていたら切りますが、どこまで切ってよいかの目安は年齢を問わず同じです。自宅で切らせてくれない場合は、動物病院での爪切りの費用の目安を知っておくと、無理に自宅で続けるかどうかを決めやすくなります。
年齢が変えるのは守る高さと行き先の置き方だけで、やめさせられない点は同じです。
急に壁でとぎ始めたときは
今までしなかった猫が急に壁でとぐようになった場合、環境の変化が背景にあることがあります。引っ越し、家具の配置換え、同居動物の増減、来客、外の猫が見えるようになった、など。
この場合は保護シートだけでは収まりにくく、原因の側を減らすほうが効きます。加えて、落ち着きのなさや粗相をともなうなら、行動の問題として扱ったほうがよい段階です。背景に体調が関わっている可能性もあるため、そうした変化が数日以上続くようなら、まず獣医師にご相談ください。
こういうときは獣医師へ
壁でとぐこと自体は正常ですが、次の様子をともなうときは環境対策だけで進めないでください。
- 【緊急】爪が根元から折れて出血し、押さえても止まらない。
- 【緊急】前足に体重をかけない、触ると強く嫌がる。骨や関節の痛みが隠れていることがあります。
- とぎ方が急に変わり、同じ場所を何十分も繰り返している。
- 肉球や指の間が赤い、腫れている、においがする。
- 粗相・過剰なグルーミング・食欲の低下が同時に出ている。
- 爪が肉球に食い込んでいる、または巻いて刺さりかけている。
上の2つはその日のうちにご相談ください。この記事で書けるのは壁と環境の側の話までで、痛みや体調が背景にあるかは診察でしか分かりません。
よくあるご質問
猫が壁で爪とぎするのをやめさせるには?
やめさせることはできません。爪とぎは正常な行動だからです。現実的なのは、壁を保護シートで守りつつ、その1メートル以内に立ち上がれる高さの縦型爪とぎを置いて行き先を作ることです。守るだけだと隣の壁に移るだけになります。
壁に貼れる爪とぎ防止シートはありますか?
あります。ただし壁紙の種類で相性が変わります。日本で多いビニールクロスは比較的相性がよく、紙クロス・砂壁・繊維壁ははがすときに壁材ごとめくれるため向きません。必ず目立たない5cm四方で試し、24時間後にはがして確認してください。
賃貸で壁を傷つけられたらどうなりますか?
ペットによる傷は通常の使用による劣化とは別に扱われ、借主負担とされるのが一般的です。壁紙は面単位での張り替えになることが多く、費用がまとまることがあります。契約内容で扱いが変わるため、契約書の原状回復の項をご確認ください。
どのくらいの高さまで保護すればいいですか?
猫が背伸びしたときの爪の位置までです。成猫で床から60〜70cm前後、体の大きい猫では80cm近くになります。既にある傷の最上部から10cm余裕を持たせると確実です。傷の部分だけ貼ると、その上を狙い直されます。
爪を切れば壁でとがなくなりますか?
なりません。爪とぎは爪を短くするためだけの行動ではなく、縄張りを示す、体を伸ばす、古い層をはがすといった意味があります。爪切りは傷の深さを浅くする効果はありますが、行動自体は続きます。