健康診断で「もう少し水を飲ませてください」と言われた。帰ってすぐ器を増やしたけれど、猫が飲む量が変わった実感はない。給水器を買うべきか、それとも器の置き方でどうにかなるのか——ここで止まっている人は多いと思います。
先に結論を書きます。器の数と場所を先に直してください。それでも足りないときに給水器です。給水器は「飲む場所を魅力的にする道具」であって、水を飲まない理由そのものを解決する道具ではありません。順番を逆にすると、買っても使われずに終わります。
そもそも、どれくらい飲めばいいのか
目安は体重1kgあたり1日40〜60mlです。4kgの猫なら160〜240ml。ただしこれは総水分量で、ウェットフードを食べていればその分は差し引けます。
- ウェットフード中心:フードに7〜8割の水分が含まれるため、飲水量は少なくて当然です。
- ドライフード中心:必要量のほとんどを飲水でまかなうことになります。ここが不足しやすい。
気にすべきなのは絶対量より変化です。急に増えた/急に減った、この2つはどちらも受診の理由になります。
普通の器と給水器の比較
| 普通の器 | 自動給水器 | |
|---|---|---|
| 飲水量への効果 | 置き方次第で十分上がる | 流れに反応する猫では上がる |
| 手入れ | 毎日ゆすぐだけ | 週1の分解洗浄が要る |
| 電気・音 | 不要・無音 | 要・わずかな動作音 |
| 置ける数 | いくつでも | コンセント位置に縛られる |
| 初期費用 | ほぼゼロ | 数千円〜 |
| 向いている猫 | ほぼ全部 | 流れる水を好む猫、留守番が長い家 |
器が劣っているわけではありません。器で足りている家に給水器は要りません。問題は「器でやるべきことをやっていない状態で、給水器に期待する」ことです。
器のままできる改善|先にこれを全部やる
- 数を増やす。頭数+1か所が下限。同じ部屋に2つ置くより、別の部屋に分散させるほうが効きます。
- ごはんから離す。野生下では獲物のそばの水を避ける習性があります。ごはん皿の横は、猫にとって最も飲みにくい配置です。
- トイレから離す。同じ理由で、こちらはさらに強く避けます。
- 器を浅く、口の広い物に替える。ヒゲが縁に当たると途中でやめる猫がいます。
- 素材を替える。プラスチックは匂いが移りやすい。陶器かステンレスのほうが飲む猫がいます。
- 1日2回替える。汲み置きより、新しく入れ替えた水に反応します。
この6つを2週間やって変化がなければ、器の側でできることは終わりです。そこから給水器を検討してください。
給水器が効く猫、効かない猫
流れる水に反応するのは、蛇口から飲みたがる猫、器の水を前足でかき回す猫です。こういう猫では、置いた初日から飲む回数が変わることがあります。
一方で、動く物や音を警戒するタイプの猫には逆効果になります。神経質な猫、シニアで聴覚が敏感な猫では、給水器を置いたせいで水場そのものを避けるようになる例があります。この場合は器を残したまま並べて置き、猫に選ばせてください。給水器に切り替えるとき、古い器をいきなり撤去しないこと。これがいちばんよくある失敗です。
選び方は給水器の選び方にまとめています。
正直に書いておくこと|フィルター不要は「手入れ不要」ではない
うちで扱っているフィルター不要タイプの給水器は、交換フィルターの費用と買い忘れがなくなるのが利点です。ただし正直に書くと、フィルターがない分、水の清潔さは水換えと洗浄の頻度に直接依存します。「フィルターがないから手入れが要らない」ではありません。
どの給水器でも、放置すればポンプ周りにぬめりが出ます。週1回の分解洗浄をやる気があるかどうかが、給水器を買っていいかの実質的な判断基準です。やらないなら、器を2つ増やして毎日替えるほうが衛生的です(給水器の手入れ)。
季節で必要量は変わる
夏は言うまでもありませんが、見落とされやすいのは冬です。暖房で空気が乾く一方、猫は寒いと水場まで行くのを面倒がります。冬に膀胱炎が増えるのはこのためです。
冬場の対策は、水場を暖かい部屋に移すこと、ぬるま湯にすること、ウェットフードを1食足すこと。残暑の時期の考え方は残暑の水分不足に書いています。給水器や水まわりのグッズは室内の必需品からも探せます。
多頭飼いの場合
給水器を1台だけ置くと、優位な猫が占有します。頭数+1か所を、部屋を分けて配置してください。給水器1台+器2つ、という組み合わせで構いません。全部を給水器にする必要はありません。
誰がどこで飲んでいるか、一度観察してみてください。飲めていない猫は、たいてい水場から離れた場所で過ごしています。
子猫とシニアで違うこと
子猫は体が小さいぶん脱水が早く進みます。深い器や高さのある給水器だと届きにくいので、低く浅い器を床に置いてください。給水器を使うなら、飲み口の高さを確認します。
シニアで気をつけるのは2つ。ひとつは関節です。屈む姿勢がつらくなると水場に行く回数が減るので、少し高さのある台に器を載せると飲みやすくなります。もうひとつは腎臓で、7歳を過ぎたら飲水量の増加は「歳のせい」で片づけず、必ず一度検査してください。慢性腎臓病は多飲多尿から始まります。
飲水量の測り方
「増えた気がする」では判断できません。1日だけでいいので測ってください。
- 朝、器に入れた量をメモする(計量カップで)。
- 24時間後、残りを測る。
- 差から、蒸発分(同じ器に同量を入れて猫の届かない場所に置いた対照)を引く。
多頭飼いでは個体別に測れないので、この場合は受診時に「家全体で1日◎ml」と伝えるだけでも情報になります。
こういうときは獣医師へ
- 急に水を飲む量が増えた。慢性腎臓病・糖尿病・甲状腺機能亢進症の代表的なサインです
- トイレに何度も行くのに少ししか出ていない。オス猫で24時間出ていなければ緊急、尿道閉塞は命に関わります
- おしっこに血が混じる、トイレ以外で排尿する
- まったく飲まない状態が24時間以上続く、同時に食欲もない
- 口を気にする、よだれが出る。口内炎で飲むのが痛い可能性があります
- 体重が減っているのに水だけよく飲む
飲水量の変化は、猫の内臓疾患で最も早く出るサインのひとつです。「よく飲むようになった=健康になった」ではありません。増えた場合も一度診てもらってください。
よくあるご質問
給水器と普通の器、どちらを先に買うべきですか
器が先です。数を増やす、ごはんとトイレから離す、毎日替える——この3つを2週間やってから判断してください。それで足りていれば給水器は不要ですし、足りなければ給水器を試す根拠がはっきりします。
給水器を置いたのに飲んでくれません
古い器を撤去していないか確認してください。並べて置いて選ばせるのが基本です。動作音を警戒している場合もあるので、静かな部屋ではなく生活音のある場所に移すと飲み始めることがあります。
水はどれくらいの頻度で替えますか
器なら1日1〜2回、給水器でも2〜3日に1回は全量交換してください。給水器は水が動いているぶん傷みにくく見えますが、ぬめりは確実に出ます。
ウェットフードを食べていれば、水は飲まなくても大丈夫ですか
ウェットは7〜8割が水分なので、必要量のかなりの部分をまかなえます。ただし完全に不要ではありません。器は常に置いておき、飲みたいときに飲める状態にしてください。
氷を入れたり、味をつけたりしてもいいですか
氷は好む猫もいますが、冷たすぎると胃腸に負担がかかることがあります。味付けは、猫用のスープを少量混ぜる程度にとどめてください。人用の出汁や牛乳は塩分・乳糖の問題があるので避けます。