猫の歯磨きおやつは効果があるのか|噛ませ方とカロリーの目安

歯ブラシを口に入れようとすると全力で逃げる。それでも口臭は気になる。そういうときに手が伸びるのが、袋に「歯磨き」と書かれたおやつです。ただ、袋の表示だけでは、何がどこまで期待できるのか分かりません。

先に結論を書きます。歯磨きおやつは「噛む時間が伸びて、歯の表面がこすれる」ぶんだけ効きます。だから、丸呑みされた時点で効果はほぼゼロになり、噛ませ方と量のほうが、商品選びより結果を左右します。本記事は、その噛ませ方と量に絞って書きます。

歯磨きおやつで変わること、変わらないこと

まず線を引いておきます。おやつタイプは歯垢の付着を遅らせますが、すでに付いた歯石は取れません。歯石は動物病院でしか除去できません。

歯垢は、食べかすと細菌がやわらかく固まったものです。ここは、こすれば落ちます。それが数日置かれると唾液中のミネラルと結びついて硬い歯石になり、こうなると噛んでも削れません。おやつが働けるのは、前者の段階だけです。

逆にいえば、すでに歯石が付いている口では、おやつを増やしても見た目は変わりません。変わらないからと量を増やすのは、いちばん避けたい失敗です。

効くとしたら、どの仕組みで効くのか

歯磨きおやつがうたう働きは、大きく二つに分かれます。どちらを狙った商品なのかで、選び方も与え方も変わります。

  • 物理的にこする:硬さと形で、噛んだときに歯の面をこすらせるタイプ。噛む回数がそのまま効果になります。
  • 成分で歯垢を付きにくくする:唾液中のミネラルと結びつく成分などを配合し、歯垢が固まるまでの時間を延ばすタイプ。噛まずに飲み込んでも一定の意味はありますが、変化はゆっくりです。

猫の場合、犬より噛む回数が少なく、そもそも丸呑みしがちです。「硬いほど効く」ではなく「その子が実際に噛む硬さがいちばん効く」と考えてください。

形と硬さで、効き方はこう変わる

同じ「歯磨きおやつ」でも、形状によって向き不向きがはっきり分かれます。

タイプ 噛む時間 向いている猫 注意点
細長いスティック・木 長い 噛むのが好き、遊びながら続く子 飽きると放置される。奥歯に当たらない持ち方をすることがある
粒タイプ(カリカリ状) 短い おやつとして食べる習慣がある子 丸呑みされやすい。粒が小さいほど効果は落ちる
やわらかいペースト・シート状 ほぼなし 硬い物を嫌う子、シニア こする力はほぼない。成分頼みになる

迷ったら、いま食べているおやつより一段だけ噛みごたえのあるものから試すのが安全です。急に硬いものへ変えると、まったく口をつけないか、逆に歯を痛めることがあります。

カロリーと、一日に与えていい量

ここが見落とされがちです。おやつ全体の目安は一日の総カロリーの一割までとされます。体重4キロの成猫なら一日およそ200キロカロリー前後なので、おやつの枠は20キロカロリーほどです。

歯磨きおやつは一本あたり2〜10キロカロリー程度の商品が多く、これだと二本から数本で枠が埋まります。「歯のためだから」と別枠で足すと、体重が増えます。与えるぶんだけ主食を減らすのが原則です。

体重管理中の猫では、枠を使い切ってまで続ける価値があるかを一度考えてください。歯みがきシートを一日おきに使うほうが、カロリーをかけずに済むこともあります。

丸呑みする猫に、どう与えるか

丸呑みされてしまうと、こする効果は消えます。次の順で試してみてください。

  1. 手で持って、端だけをくわえさせる。持っている間は飲み込めません。
  2. 横向きに差し出し、奥歯で受け取らせる。前歯だけで受け取ると、そのまま飲み込まれます。
  3. 空腹すぎるタイミングを避ける。食事の直後より、食間のほうが落ち着いて噛みます。
  4. それでも飲み込むなら、噛む時間の長いおもちゃ型に切り替える。

噛む時間を伸ばす方向で考えるなら、おやつではなくおもちゃ側で解決する手もあります。どこまで期待できるかは 猫が噛んでいいおもちゃ|デンタル効果のあるものとないもの にまとめています。

歯みがきと併用すると、どうなるか

おやつは歯みがきの代わりにはなりませんが、入口としては役に立ちます。口の周りを触られること自体に慣れていない猫では、おやつを手で持って与える時間が、そのまま口元に触る練習になります。

実際の進め方は、おやつを持つ手と反対の手で、頬をそっと触るところから始めます。これが嫌がられなくなったら、指、次にシート、最後にブラシ、という順です。段階の踏み方は 猫の歯磨きのやり方 で詳しく書いています。

逆に、おやつだけを続けて歯みがきに進まないと、数か月後には歯石が増えて、結局は病院での処置になります。おやつは時間を稼ぐ手段であって、ゴールではありません。

買う前に確認すること

パッケージで確認したいのは、次の四点です。

  • 一本あたりのカロリー表示:これがないと、量の管理ができません。
  • 対象年齢と硬さの表記:シニア向けと成猫向けでは硬さが違います。
  • 主原料:噛みごたえを出すためだけの増粘剤が中心の商品もあります。
  • 与える目安量:体重ごとの上限が書かれているかどうか。

「歯磨き」という言葉自体は、効果を保証する表示ではありません。書かれていない効果は、期待しないほうが安全です。

向かない猫、やめたほうがいい場合

すべての猫に向くわけではありません。次に当てはまる場合は、与える前に見直してください。

  • すでに歯肉が赤く腫れている。噛むこと自体が痛みになります。
  • 歯が欠けている、ぐらついている。硬いものでさらに割れることがあります。
  • 療法食を食べている。おやつで栄養バランスが崩れます。
  • 体重が増加傾向にある。カロリーの枠がそもそもありません。
  • 丸呑みが直らない。喉に詰まらせる危険のほうが上回ります。

おすすめの選び方と、試しやすい形

噛む習慣がまだない猫なら、細めで軽いものから。すでに噛むのが好きな猫なら、噛みごたえのあるタイプが続きます。

なお、またたびに反応しない猫は約三割いるとされます。反応しない子では、においで釣る前提の商品はそもそも噛んでもらえません。

こういうときは獣医師へ

おやつで様子を見てよい段階と、そうでない段階があります。次のサインが出ているときは、商品を変える前に受診してください。

  • 口を開けたまま呼吸している、よだれに血が混じる:開口呼吸は緊急です。すぐに受診してください。
  • 食べたそうに近づくのに、口をつけずに離れる。痛みで噛めていない可能性があります。
  • 片側だけで噛む、顔を傾けて食べる。
  • 歯ぐきが赤く腫れている、触ると出血する。
  • 口臭が急に強くなった。歯だけでなく、腎臓など内臓の病気が隠れていることがあります。
  • おやつを与えたあとに、繰り返し吐く。

歯石は自宅では取れません。麻酔下での処置が必要かどうかも含め、口の中の状態はかかりつけの獣医師に見てもらってください。

よくあるご質問

歯磨きおやつだけで歯みがきの代わりになりますか

なりません。歯垢が固まるまでの時間を延ばすことはできますが、歯周ポケットの汚れは落とせず、すでに付いた歯石も取れません。あくまで、歯みがきに進むまでのつなぎとして考えてください。

毎日与えても大丈夫ですか

カロリーの枠に収まっていれば、毎日でも問題ありません。目安は一日の総カロリーの一割までです。与えたぶんは主食を減らして調整してください。

子猫にも与えられますか

商品ごとの対象年齢に従ってください。乳歯から永久歯に生え替わる時期は口の中が敏感で、硬いものを嫌がることがあります。無理に噛ませる必要はありません。

どのくらいで効果が分かりますか

歯垢の付き方の変化なので、見た目で分かるまでには数週間かかります。口臭の変化のほうが先に気づきやすいですが、強い口臭が続く場合は別の原因を疑ってください。

硬いほど効果がありますか

いいえ。噛まなければ効果は出ないので、その子が実際に噛み続けられる硬さがいちばん効きます。硬すぎるものは歯が欠ける原因にもなります。

またたび系の噛むタイプをまとめて見たい場合は またたび・噛むおもちゃ をご覧ください。

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