秋になって、黒い服にだけ白い毛がつくようになった。掃除機は毎日かけているのに、ソファの隙間からまた毛が出てくる。抜け毛が増える時期は、掃除の回数を増やしても追いつきません。
先に結論を書きます。抜け毛そのものは止められません。できるのは、床に落ちる前にブラッシングで回収してしまうことです。掃除は「落ちた後」の工程なので、どれだけ頑張っても抜ける総量は変わりません。
春と秋で抜け毛はどう違うか
日本では春(3〜5月)と秋(9〜11月)が換毛期です。引き金になるのは気温より日照時間の変化で、日が短くなり始めた頃から秋の抜け毛は増えます。
春と秋では抜ける毛の性質が違います。春は冬毛のアンダーコート(下毛)がごっそり抜けるため量が多く、綿のようにふわふわした毛が出ます。秋は夏毛が冬毛に入れ替わる時期なので、一度に出る量は春ほどではありませんが、期間が長引きやすいのが特徴です。
秋は「一気に来ない代わりに、なかなか終わらない」と感じやすい換毛期です。この時期の進み方と増やすべきケアは秋の換毛期の抜け毛で詳しく扱っています。
一年中抜けるのは普通か
室内で暖房と冷房のある環境にいる猫は、外の日照や気温の変化を受けにくく、季節の境目があいまいになります。一年を通して少しずつ抜け続けるのは、室内猫では珍しいことではありません。
困るのは「今は換毛期じゃないから」と間隔を空けてしまうことです。抜けかけの毛が被毛の中に留まり、もつれと毛玉の材料になります。カレンダーではなく、ブラシに絡む毛の量で頻度を決めてください。
ただし、季節と関係なく量が急に増えたときは別です。後述する病気を先に確認してください。
抜け毛対策は「回収する」と「散らさない」に分かれる
抜け毛グッズは種類が多いですが、やっていることは四つに分かれます。自分がどれをやっているか整理すると、抜けている工程が見えます。
| やること | 効くタイミング | 道具 |
|---|---|---|
| 抜ける前に回収する | 毎日〜週数回 | ブラシ・コーム・グローブ |
| 抜けた毛を散らさない | ブラッシング中 | ミスト付きコーム・スチームブラシ |
| 落ちた毛を集める | 週数回 | 粘着ローラー・掃除機 |
| 部分的に短くする | 必要時のみ | トリマー(脇の下・お尻周り) |
優先順位は上から順です。掃除の回数を増やすより、回収の回数を増やすほうが総量が減ります。
ブラシとコームの種類別の使い分け
回収量だけで選ぶと失敗します。猫が嫌がって逃げてしまえば、性能の高い道具ほど使われなくなるからです。
| 種類 | 得意なこと | 向く猫 |
|---|---|---|
| ラバーブラシ・グローブ | なでる動作で表面の毛を回収 | 短毛種・道具を嫌がる猫 |
| コーム(くし) | 根元まで通す・もつれを早く見つける | 長毛種 |
| ミスト付きコーム | 静電気と飛散を抑える | 乾燥する季節 |
| スチームブラシ | 湿らせながら回収する | 長毛種 |
- 最初の1本はラバーブラシかグローブ。ペットグルーミンググローブのような手袋型は、猫から見ると「触られている」に近く、警戒されにくい傾向があります。
- 飛散が気になるならミスト付きコーム。ペットスプレーコームは濡らすためではなく整えるための道具です。ミスト量は控えめに。
- 長毛種にはスチームブラシ。3in1 スチーミーペットブラシは作動音があるため、電源オフで慣らしてから使ってください。
- 迷うなら数種類を試す。グルーミング・抜け毛ケアお試しセットなら、猫の反応を見てから絞れます。
違いは猫の抜け毛対策・グルーミング用品にまとめています。ただし、どの道具を使っても抜け毛がゼロになることはありません。回収を早めているだけです。
短毛種と長毛種でケアは変わるか
変わります。短毛種は総量が少ないわけではありませんが、毛が短いぶん絡まりにくく、ラバーブラシで表面をなでるだけでもかなり回収できます。頻度は週2〜3回で足り、換毛期だけ毎日に上げれば十分です。
長毛種は「絡む前に通す」ことが目的になるので、できれば毎日。脇の下・内股・耳の後ろ・お尻周りの四か所は、猫が自分で手入れしにくく毛玉ができやすい場所です。ここだけでも毎日触ってください。同じ短毛種でも、アンダーコートを持つ種は換毛期の量が段違いに増えます。
ブラッシングを嫌がる猫への進め方
嫌がる猫の多くは、ブラシ自体ではなく「長く拘束されること」を嫌がっています。1回30秒で切り上げ、背中や首の後ろなど猫が好む場所だけにしてください。お腹や尻尾は嫌がる猫が多いので、態度が和らいでからで遅くありません。
毛玉を見つけたときは、ブラシで無理に引っ張らないでください。皮膚ごと引っ張られて痛いため、その一回でブラッシング嫌いになります。固くなった毛玉はトリマーで少しずつ切るか、難しければトリミングサロンや動物病院で相談してください。
換毛期は1回を長くするより、短い回数を増やすほうが続きます。
毛球症と抜け毛の関係
猫は毛づくろいで自分の抜け毛を大量に飲み込んでいます。飲み込んだ毛はふつう便と一緒に出ますが、換毛期に量が増えると胃の中で固まり、吐き戻しが増えます。これが毛球症です。
ブラッシングは部屋の抜け毛対策であると同時に、毛球症の予防でもあります。床に落ちる前に回収した毛は、猫のお腹にも入りません。吐く回数が換毛期だけ増える猫は、頻度を上げると落ち着くことがあります。
掃除の手間を減らす工夫
- 寝床を「毛の受け皿」にする。洗える毛布を決まった寝場所に敷くと、抜け毛の多くがそこに集まります。毛布1枚を洗うほうが早いです。
- ブラッシングは毎回同じ場所で。床が硬くて拭ける場所が向きます。カーペットの上では、回収したはずの毛が繊維に戻ります。
- 粘着ローラーは服より先に布ものへ。ソファとカーテンに毛が溜まると、着替えるたびに服へ移ります。
- ブラッシング後は数分換気する。舞い上がった毛が床に落ち切るまでの時間が変わります。
掃除機は最後の工程です。落ちた毛を集める作業なので、頑張っても抜ける量は変わりません。
抜け毛が異常に多いときに疑う病気
「今年は抜けすぎている」と感じたとき、見るのは量ではなく抜け方です。換毛期の抜け毛は全身からまんべんなく抜け、地肌は見えません。地肌が見える、左右対称に薄くなる、一か所だけ抜けるという抜け方は、換毛期のものではありません。
- 皮膚糸状菌症(真菌):円形に毛が抜け、フケやかさぶたを伴う。人にもうつります
- ノミやダニによる皮膚炎:腰から尻尾の付け根に集中しやすい
- アレルギー性皮膚炎:かゆみが強く、掻く・なめて抜けます
- 心因性脱毛:お腹や内股を執拗になめ、そこだけ毛がなくなる
- 甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患:高齢猫で、食べているのに痩せる場合
いずれもブラシで解決する問題ではありません。抜け方に偏りがあれば、道具を買い足す前に受診してください。
こういうときは獣医師へ
抜け毛は正常な現象ですが、次のような場合はグッズではなく診察が必要なことがあります。
- 左右対称に、または部分的に地肌が見えるほど抜けている
- 皮膚に赤み、フケ、かさぶた、臭いがある
- 同じ場所をしきりになめる・掻く
- 抜け毛の量が季節と関係なく急に増えた
- 毛づくろいをまったくしなくなり、毛がべたつく・もつれる
- 【緊急】吐こうとして吐けない、ぐったりしている、丸一日以上便が出ない——毛球が詰まっている可能性があります。すぐに受診してください
気になる症状がある場合は、獣医師にご相談ください。
よくあるご質問
猫の抜け毛対策で、いちばん効果があるのは何ですか?
抜ける前にブラッシングで回収することです。掃除の回数を増やしても、抜けた後の対処にしかなりません。短毛種なら週2〜3回、長毛種はできれば毎日、1回30秒でも続けるほうが総量は減ります。
換毛期はいつですか?
日本では春(3〜5月)と秋(9〜11月)が目安です。ただし室内で空調のある環境にいる猫は季節の境目があいまいになり、一年を通して少しずつ抜けることがあります。時期で判断せず、抜け毛の量を見てください。
グローブとブラシ、どちらがいいですか?
回収量だけ見ればブラシのほうが多いですが、猫が嫌がって逃げてしまうなら意味がありません。まずグローブで触られるのは嫌じゃないところまで進めてから、ブラシに移っても遅くありません。
抜け毛の少ない猫種にすれば解決しますか?
抜け毛が比較的少ないとされる猫種はありますが、ゼロにはなりません。いま一緒に暮らしている猫にできるのは、ケアの頻度と道具を合わせることです。
毛玉ができてしまいました
ブラシで引っ張らないでください。皮膚ごと引かれて痛みが出ます。固くなっていない段階ならコームで少しずつほぐし、固い場合はトリマーで切るか、トリミングサロンや動物病院で相談してください。